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副腎腫瘍
副腎は後腹膜にある臓器で、体の背中側にあります。大きさは1cm程度でCTでは線のようにうっすらと見えるだけです。そこに腫瘍ができると大きくなり、CTなどの画像検査で確認できるようになります。
副腎は生命の維持に重要なホルモンを産生する臓器です。副腎は皮質と髄質の2層構造で、副腎皮質からは体内での糖の蓄積と利用を制御する糖質コルチコイド、無機イオンなどの電解質バランスを調節する鉱質コルチコイド、そして生殖機能に関与する性ホルモン、特にアンドロゲンが分泌されます。一方、副腎髄質からは、カテコールアミンホルモンであるエピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が分泌され、体のストレス反応などの調節を行っています。
治療方法
手術が必要な患者さんには、当科では原則としてロボット支援下に副腎摘出術を行います。開腹手術に比べて術後の痛みが軽く、回復が早いというメリットがあります。手術の翌日から、歩行可能です。通常術後1週間程度で退院が可能です。
副腎の代表的な病気
1:原発性アルドステロン症
- 高血圧の患者さんの約10%にこの病気がみつかります。
- 特に、高血圧に対して何種類も薬をもらっている方(薬剤抵抗性の高血圧の方)は、この病気についての検査が必要です。
- 副腎偶発腫瘍(検診等の画像検査で偶然みつかる腫瘍)の約3%にこの病気がみつかります。
- 診断:本疾患に特徴的な所見であるアルドステロン値などを検査します。CT、MRIなどの画像検査を行います。
2:褐色細胞腫
- 発作性高血圧、治療抵抗性高血圧、家族性の褐色細胞腫、高血圧+糖尿病、麻酔や外科手術や血管造影中の血圧上昇などが当てはまる方は、この病気が疑われます。
- 動悸、不安感、顔面の蒼白、頭痛などの症状が認められます。
- 病理所見では悪性か良性の判断が難しく、手術後も長期間に渡る画像フォローが必要です。
- 診断:尿中および血中のカテコールアミン濃度を調べます。CT、MRI、131I-MIBGなどの画像検査を行います。
3:クッシング症候群
- 慢性的なコルチゾールの過剰状態が持続するため、中心性肥満(腹部肥満)、満月様顔貌(ムーンフェイス)、野牛肩(背中の上部に脂肪がつく)、皮膚菲薄化(皮膚が薄くなる)、皮膚線条(赤紫色の筋)など様々な症状を引き起こすとともに、筋力低下、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、うつ症状などの合併症もみられます。
- 診断:血液中の副腎ホルモンやホルモンの日内変動を調べます。様々なホルモンを投与して行う負荷試験なども行います。CTで副腎の腫瘍を確認します。
4:内分泌非活性腫瘍 (副腎癌を含む)
- 副腎ホルモンの過剰産生がない腫瘍も存在します。大きさが4cmを超える場合や画像上副腎癌が否定できない場合は、基本的に手術で副腎摘除を行います。副腎癌では切除できない場合や転移のある場合、抗がん剤治療を行います。
- 診断:各種副腎ホルモン検査を行い、異常が無いことを確認します。CTやMRIで副腎腫瘍の大きさや形状を評価し、悪性の可能性を調べます。