診療方針

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前立腺癌

診断から治療までの流れ

血液検査でPSA(前立腺特異抗原)の値が正常値の上限である4ng/ml以上の場合には、前立腺癌の可能性があります。しかし、前立腺肥大症や感染でもPSAが上昇することがあるため、前立腺MRI検査を行った上で必要な場合には、前立腺の組織を採取する前立腺生検を行います。それにより前立腺癌と確定した場合には、癌の占拠部位、大きさ、深達度および転移の有無などをCT、MRI、骨シンチグラフィーを用いて診断し、癌の進行度(病期)に応じた治療を行います。

病期

がんの進み具合は、病期(ステージ)と呼ばれ、一般に「TNM分類」という分類法が使われています。T、N、Mの文字は、
T(Tumor=原発腫瘍)→前立腺でがんがどれくらい拡がっているか
N(Nodes=所属リンパ節)→リンパ節に転移があるかどうか
M(Metastasis=遠隔転移)→骨、肝臓、肺など、前立腺から離れた他の臓器に転移があるかどうかを表し、さらにそれぞれが細かく分けられています。画像検査によって、病期を診断します。

TNM分類

TNM分類

治療方法

基本的には根治を目的として手術療法や放射線療法が選択されますが、年齢、病期などにより、ホルモン療法や化学療法が選択肢になる場合もあります。

手術療法

前立腺をすべて摘出することにより根治を目指します。主な合併症/後遺症として、尿失禁、勃起障害がみられます。当科では、ダヴィンチ(da Vinci)やヒノトリ(hinotori)を使用したロボット支援前立腺全摘除術を行っていますが、腹部の大きな手術の既往、重度の緑内障、未破裂の脳動脈瘤がある方は、開腹手術となることもあります。

放射線療法

手術と同様に根治を目指す治療として行われますが、手術後の再発に対する救済療法として、転移による痛みのコントロールとしても有用です。根治を目指した放射線療法の合併症/後遺症としては、膀胱直腸炎、皮膚炎、勃起障害などがあります。当院では外照射併用高線量組織内照射を行っていますが、病状に応じて外照射のみの場合やホルモン療法を併用することもあります。

ホルモン内分泌療法?薬物療法

前立腺癌は男性ホルモンによって増殖が促進されるため、男性ホルモンの分泌/作用を抑制することで癌を縮小させます。副作用としては男性更年期障害などが挙げられます。ホルモン療法に抵抗性となった場合には、抗がん剤や遺伝子検査を行った上でPARP阻害薬による治療を検討することがあります。